「んで話はさっき話した顛末だ。ほんとここまで上手く俺たちを使える奴を俺は久々に見た」
でもどうしてでしょう。どうして彼は執事であるという事だけを覚えていたのでしょう。
あれだけの目にあっておきながら、どうしてそれを忘れはしなかったのでしょう?
その問いかけに、
「それは――――」
ルゥは口を開く。
「そんな。私はただ」
きっとアルベルトが自分であるという事だからじゃないかな。
「愛する大事な人に生涯幸せで快適な生活を送っていただきたいのです」
君はアルベルトの価値が何であるかわからないと言ったね。
「それを害するものがあればそれを取り除くまで。それだけの事です」
それはアルベルトが執事であるという事だよ。
そう言ってアルベルトはクリスマスカラーのリボンが結ばれた板チョコを差し出し、
「良いクリスマスを」
そう言って少年に渡し、その場を去った。
もらった少年はその板チョコをひも解き、巻かれている紙から何かを引っ張った。見るとそれは紙幣。
「なに買ってやろうかな」
にっこりと笑った。
アルベルトが執事である事が価値。でもアルベルト自身はそれを価値とは思ってないんだけどね。
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