少年は壁にもたれ、向かいにいるアルベルトに、
『あいつらシケた口止め料しかくれなかったんだ。足元見やがって』
見上げて愚痴ってた。
『ちょうどこっちにも飢えてたし、じらしてそれ以上の価値があるように見せかけて、値段釣り上げてもらった金より
もっともらおうかと思ったのによ』
この少年にとってのおいしい思いとはこういうことである。
そう言ってその屋敷を教えた。
「驚いてたろ?」
「はい」
「だろうな、だってあの家なりの口止め料が俺を満足させていたと思っていたんだからさ。ざまぁみろ」
意地悪そうに笑う。正に他人の不幸は蜜の味である。
『話には聞いてたんだ。どこの誰かが新聞社を買収したって。なんでだろうと思ったら、
次にこの事件が見出しに載り出した。それがでっち上げなんてすぐにわかるさ、
もし誘拐されたなら新聞社よりも先に俺たちの方に入って来る。
それから話が流れて巷に定着する。更に真実味を帯びさせるために警察関係者を数名も買収してるみたいだぜ。
んで準備万端整って誘拐した。いわゆるカモフラージュって奴だな。一人相手に随分と手の込んだ事をするなって
思ってはいたよ。まぁでもつぶれる事を考えたらそうするかな。なんでもその家、金にかなり困ってるって聞いてたから』
『で、俺がそこでたまたま襲われるのを見たんだ。待ち伏せはしてねぇ。
――――で、フッと目があってよ、口止め料って渡されたんだよ』
『なぜそんな事を』
『さぁな。ただ何か目的があるらしいけど、それについては興味がねぇから聞いてねぇ。
ただ、その奥に誰かがいるって事だけはなんとなくだけどわかってるぜ』
頭の後ろで手を組み、
『それよりあんた、この先も用があるなら他の奴も教えといてやるぜ』
そう言って見上げると、
『ありがとうございます』
返ってきたので、簡単に教えたのち、
『じゃあ他の連中にも話を回しておく。わずかに視線を向ければ、その連中はさまざまな形でコンタクトを取る』
そう言って近くに落ちていた煙草の箱を手に取り、
『このタバコの箱、酔っぱらった奴がぶつかって来る。その時に渡せ』
軽くはたいてアルベルトに渡す。
『気をつけろ』
『で、酔っぱらいのカミさんがその情報を持って発信する場所に行く』
「そして瞬く間にあのとおりさ」
『次はおばさん。薬関連はここに頼んだらいい。果実を落とすと思うからその時に薬の名前を言う』
「あらごめんなさいねぇ、手伝ってもらっちゃって」
『そしたら今度はそれがばぁさんに伝達される。そのばぁさんは道を聞く。その時に受け渡せ』
「すいません」
『それから親子連れでな、そのちっさい娘の方が当たって来る。飛ばしたクマのぬいぐるみのリボンに』
「だって早くしないと売り切れるもん」
「すいませんうちの子が」
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