リィはディスや母親、ステファニーたちと共に買い物に来ていた。それは――――
「よろしいのですか侯爵様」
ステファニーにゲストルームではない部屋を与えたのだった。
「気にしないでいいよ」
つまりそれはステファニーを更に親しくなる家族の一員として迎え入れる事に他ならない。
お願いされたと言うのもあるが、願い主である父親がああなってしまっては、帰る場所も下手をすれば無くなる
可能性は十分にある。それにあのような状況下に戻すなど、例えレルや奥方が帰還を求めてもルゥは断るつもりでいる。
「あ、これいいんじゃない?」
「え、でも」
「よろしいのよ、今日からあなたも家の一員になるのですから。なんだか娘が出来たようでうれしいわ」
そう言いながら買い物を進める。
ステファニーは旅行のモノ以外の荷物しか持ってきていなかったので、一通りの物を一緒に買いに来ていたのだ。
リィの傍らにいるディスは厳しい表情で、
「リィ様、本日はステファニー様の物を買いに来たんですよ」
念を押す。
「えー、いいでしょ〜」
リィは少しむくれるが、ディスにとってはいつもの事なので平然と、
「構いませんが、ステファニー様以上の物は買わないでください。車に入れられなくなります」
二度も念を押される。
「私は別に構いませんわ」
「ステファニーちゃんもそう言ってる事だし」
「だめです」
きっぱり。
「ステファニー様、リィ様の買い物の凄さはご承知のはず。今日は控えていただきます」
ステファニーに忠告し、目を輝かせていたリィに厳しい視線を向ける。
「ケチー」
その言葉に“なんとでも”と言った感じでフンっとそっぽを向く。
それからしばらくして別行動を取り、ステファニーがショーウインドウのぬいぐるみに目をやり、
「まぁかわいらしい」
などと言っていたら、
「ステファニー」
声をかけられた。
それに振り向くステファニー、そこにいたのはレルだった。
衣服はボロボロで擦り切れ、少し痩せてダボダボになっている。それはもう――――
「フォードに会わせろ」
息切れを起こし、
「話したい事が」
手を掴もうとした次の瞬間、パシンと手を、
「ステファニー様に触らないでください。けがらわしい」
ステファニーつきのメイドが叩いてステファニーの少し横前に立つ。
「何を言って」
そう言って再び近づこうとした。臭いにおいが飛んでくる。距離はあるはずなのに鼻にツンとくる。
「いやっ!近づかないでっ!私・・・・・あなたみたいな人知りませんわっ!」
妹であるステファニーがわからないほどに。
「ステファニー・・・・・」
愕然とするレル。
その間にステファニーとメイドは人波に消えた。
そして生涯後悔するだろう、己のしてしまった事の大きさに。
それを追う事もなく、頭に響くかつて言われた今は亡き人間の言葉の深みが身体を支配し、その場に立ち尽くす。
それから街はクリスマスの時期に入り、街がクリスマスカラー一色となる。
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