厚い布に覆われた鳥かごに一羽の鳥がいる。その鳥かごの扉は光を放ち開け放たれている。
 なのにその鳥は逃げようとはしない。
 それどころか、その扉すら見ようとはせず、それをまた避けている。
 厚い布に覆われた世界を慕っているかのように。だが――――


 夜のとばりから馬の蹄の音がする。
 空は徐々に白みをおびて夜の終わりを告げるかのように背後から押し迫り、着く頃にはさわやかな日差しに世界が覆
われていた。

 その鳥は振り向いた。そして徐々にではあるが光が放たれた扉を興味深げにキョロキョロと見る。

 馬車のドアが開く。まだ光に慣れていない体は少し目を伏せ、軽くよろめいたその時、彼が胸を貸した。

 そして扉に飛び移り、躊躇しながらも空へと飛び、新たな宿り木へ、

「大丈夫ですか」

 足をつける。

「大丈夫」

 まばゆい世界へ――――




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