君の中の僕は、どれだけ繋がっているのだろう。

 だがその不安をぬぐい去るかのようにアルベルトはそれに微笑み、寄せる顔に赤みを帯びながらも寄って唇に、戸惑いをわずかに見せながらもそっと当てた。

 つたなく、やわらかく、ほんのりと熱く溶けてしまいそうな甘いチョコレートのようなキス。


 ドアに人影がある。レルだ。
ここにいると言う事は一階にいたステファニーの制止を無視して来たのだろう。

 さしずめあの時のリベンジ。この日の為に策を考えてきたのだろうが、その策は用途を失った。

 それに目を見張る。そして――――



 それからスッと抱きしめて離れない。

 アルベルトの鼓動がいつにもまして脈打っている。

深く深く、そは密着するわが身体に響く。それは自分とて同じ事。

深く深くそれはゆっくりとアルベルトの身体に響く。

その音がゆっくりとゆっくりと互いの身体に沁みわたっていく。

 時間はその一秒が一分、一分が二十分、そう思えるほど深くゆっくりと刻みつけるかのように過ぎて行く。



「あと少しだけ・・・・よろしいですか」

貴方の

「・・・・いいよ。ねぇ、アルベルト」

君の

「はい」

音がする――――


入れない。主従を超えたものがそこにある。それはもう誰も入る事が出来ない世界。


「ずっと側にいてね。ずっと」
 ルゥはその隙間から腕を伸ばす。

「・・・・はい。ずっと貴方のそばにおいてください・・・・ご主人様」

 至福に浸るかのような表情をし、ルゥの身体を更に抱きしめる。



 けど・・・・

君はどれだけつながっているの?




「――――!」

 二度と手に入る事のないかけがえのないものを失う事になる。

「では、まいりましょうか」
そう言ってルゥをそのまま片手で抱き上げ、

 そしてそれに気がついた時、それは――――

 通り過ぎ、部屋を出て行く。レルの存在など知らずに。

「・・・・待て」

 その背がゆっくり遠ざかる。

「待ってくれっ!」



 もう届かない――――



 抱き上げられたルゥはアルベルトに頬を当てる。

「・・・っ!」
 驚いてルゥを見る。

「いつもより熱いね」
 その反応にクスクス笑う。

「つたなくて申し訳ございませんでした」

「アルベルトにしては頑張ったね」
 胸に触れる。それにビクッとなり、
「・・・・!」
 もはや言葉にならない。

「破裂しそうだね・・・・フッ」

 廊下に響く幸せな笑い声。

 それがレルの耳には拷問でしかなかった。




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