絶対に・・・・・
震える唇をひと噛みし、
「お前なんかに絶対に渡さないっ!」
激昂した次の瞬間、身体にドクンと重みがある鼓動が起き、崩れ落ちていく。
「ご主人様っ!」
それにアルベルトはパッとレルの手を振り払い、落ちる前に抱きとめる。
それにうつろげな目でアルベルトを見る。それに、
「ここにいますよ。安心して下さい」
そう言う。
それに少し呆然としたがすぐ我に返り、
「この僕の手を振りほどいていくとは失礼にもほどがあるんじゃないのか」
と言ったが、
「・・・・」
「おい、聞いてるのかっ!」
「・・・・」
どうやら聞こえてない。
それに怒りを更に増幅させ、腰についている鞭を手に取って床にたたきつけると、ハッと我に返り、
「主人を無視するとは無礼とは思わないのかっ!」
そう言われたので、足に腕を通して抱き上げながら、
「申し訳ございません。ですが私は主人が第一ですので」
立ち上がりざま振り向く。
「お前の主はこの僕だっ!その侯爵じゃないっ!」
振り上げて飛ばした瞬間、
「お兄様っ!いい加減になさってっ!それに侯爵様に対してのそのものいい、失礼ですわよっ!」
ステファニーがその前に手を広げて立ちはだかった。
「ステファニー様っ!」
「ステフっ!」
それにギリギリ軌道修正し、鼻のギリギリでその鞭は下がった。
「ステファニー様お下がりください」
「どけっ!ステフっ!このような無礼者、打ちのめして」
熱くなる兄に対し、いつもとは打って変わって冷静なステファニーは、
「いいえ、どきませんわ。ぶちたいならまず私からぶって」
毅然と立ちはだかり、
「お兄様はあと一体どれだけの人を不幸にすれば気が済むのっ!」
問いかけた。
「彼があぁなったのも全てお兄様のせいじゃない。それを返さなければいけないですって」
わずかに唇を噛み、
「彼を主から奪っていったお兄様がそれを口にするのはおかしいですわっ!」
それに時が止まる。
「もういいでしょう。彼をそっとしておいてあげて。彼は十分にやったわ。それをおわかりになかったのはお兄様の方
じゃないっ!もうこれ以上、彼を傷つけないでっ!」
せきを切ったかのように泣き崩れた。
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