その後、主治医を呼んで診せる。見立てでは普段上げない感情を上げすぎて失神に近い状態になったとの事。
 明日はその誘発された反動で熱が出て風邪になるかもしれない、そう言って屋敷を後にした。

ルゥの腕を布団の中へ入れた時、
「アルベルト」
 うわ言に近いような口調で呼ぶ。

「はい」
「ステファニーは大丈夫?」
「はい、大事には至っておりません」
「そう、それならよかった」

「はい」
 布団を上げようとした手をつい先ほど入れたばかりの手が出、何かを探すように揺れている。
 その手をソっと握ると同時にその場にひざまずく。



 それから静かに寝入ったルゥを見、手を布団の中に入れて部屋を出、リビングへと赴く。そこには――――

「にぃ様は大丈夫?」
 心配そうにリィがきく。医者が来るちょうどその時に返ってきたのだ。その後ろにはディスがいる。

「はい、大事には至っておりません」
「そうなんだ。よかったぁ」
 胸をなでおろすリィの斜め後ろにいたステファニーがうつむいて前に出、
「ごめんなさい」
 必死に何かをこらえた感じで謝る。

「ステファニーちゃん?」

「ごめんなさい」
 ポロポロと泣くステファニーの前にひざまずき、何も言わずにほほ笑みかけ、ハンカチを差し出す。

「お疲れでしょう。今宵はゆっくりとお休みください」




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