アルベルトがベッドで仰向けに胸を掴んで苦しんでいた。喉も空気が詰まったような悪さが来ている。
そこにキィとドアが開く。あの少年だ。普段の表情とは一変、妖しさが漂った表情をしている。
灯りは消しており、差し込む月明かりが少年をより一層あやしくさせていた。
「どうしました?」
すぐに気がついて起き上がり、眼鏡をかけずに胸を抑えつけたまま開けたドアの前にいる少年の元に来る。
「苦しいでしょ?」
「え」
「あのお茶に毒薬を仕込ませておいたんだよ」
詰まった笑いをし、
「助かりたかったら解毒剤をあげるよ。僕の口の中にある。早くしないと死ぬよ」
妖しく笑うが、それにアルベルトは優しく笑って、
「・・・・・何を言ってるのか、よくわからないのですが」
返した。
「え?」
「早く部屋に戻りなさい。明日も早いですよ」
そう言ってドアを閉め、再びベッドに横になる。
だが痛みと苦しみは治まるどころか更に増す。意識が昏睡に近い状態になっていく。
そして再びキィとドアが、
「だから言ったのに、早くしないと死んじゃうよ。いやでしょ、こんな形で死ぬのは」
開く。今度は入ってきた。ヒタヒタと靴の音とは違う足音が鳴り響く。
「さぁ早く僕の口から取りなよ、ただし言う事は聞いてもらうよ」
それにアルベルトはもうろうとする意識で、
「戻りなさい」
そう言うが、今の状態でその言葉に力はない。
「さぁその強がりが一体いつまで」
乗りかかったその時、アルベルトは薄く眼を開けた。その瞬間みひらいてカァっとなり、左肩を掴んで引き落とした。
それは少年の服装が上にシャツ一枚という状態だった。ただでさえ彼はそう言った事が苦手な人間。その時一瞬だけ
意識がはっきりし、反射的に引き落としたのだ。
「っ・・・・・」
少年はひれ伏すように倒れて軽く頭を打ったのかさすりながら起き上る。
その間にアルベルトは起き上がってうつむき加減で胸を掴んでいる。
「大丈夫ですか?」
「強情だね、ほんとに死ぬよ?それでもいいの?」
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