「ごめんね」
 ディスの目が影を差すとともに据わる。

 覚悟は揺れない。信頼と言う覚悟は。この世で一番恐ろしいのは人である事に変わりはない。
 そしてその中で一番恐ろしいのは「覚悟」をもった人間である事を、俺自身、その身で知った。


 覚悟は追い込まれれば追い込まれるほど強くなる。

 前主人の舌が入る。

「っ」

 それをギリッと思いっきり噛んだ。

「へっ、てめぇみてぇな使いっ走りの三下にやられる俺様じゃねぇんだよ。そんなに俺としてぇなら殺してからにする
んだな。それからこの身体を思う存分むさぼるといい、ハイエナみたいにな」
 嘲った含み笑いをすると、思いっきり顔にこぶしが飛んだ。

 それからどれほどやられただろう。意識がもうろうとしてきた。

 最後には感覚がなくなって前主人の動きがゆっくりと見える。

「お前これでもまだ減らず口を」
 再び手を上げようとした時、ドアが開き、
「ご主人様」
 メイドが声をかける。

「なんだ。今は取り込み」
 と言った半ばで、メイドは困惑した表情で、
「もうしわけございません・・・・その」
 口ごもる。

「なんだ?早く言え」

「一階に・・・・」


 その時、一階には――――





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