その夜――――

 ルゥや他の使用人たちが寝静まった頃、アルベルトは車で街へと降りた。

 夜の街は別の色を見せていた。路地裏のバーがにぎわいを見せ、街灯の下でいちゃついたり、または泥酔して寄りか
かり、意味不明な事を言っていたりする。

 そこを車もわずかにしか通っていない道路を通り、その店の付近で閉店間際の雑貨店に聞いてみる。

 その主人に教えてもらい、ちょっとした裏手へと回す。ディスは車を店に横付けにはしない。だいたいその店の近く
のちょっとした裏手に止めてから行くのを交代で乗っているので知っていた。だが場所によって違うので、店の主人に
聞いたのだ。

 車はあった。しかしいない。だが、その下にその店の袋が落ちていた。中身はない。きっとそこらへんの動物か人が
食べてしまったのだろう。

 そしてその先の方を見、歩き出す。

 その道は酒や色々なものがにおう。時折軽く手で押さえながら歩いていると、その酒場のちょっとした裏、その店で
下働きをしているであろう13,4歳のハンチング帽をかぶった少年に尋ねる。

 箱を持っていた少年はそれを下ろし、
「あぁ、知ってるよ」
 あっさり答える。こんな簡単に手掛かりが見つかったかと思いきや、
「でも、ただでじゃあなぁ」
 しぶりながらアルベルトの腕をつかみ、
「俺と今日してくれたら教えてやってもいい」
 誘ってきた。

 それにアルベルトは、
「私そういうのは」
 小刻みに首を振って断る。顔が薄くではあるが赤みを帯びている。

「でも教えてほしいんだろ」
 少し生意気な態度で出るが、
「他に手はないのですか?」
 聞く。それに、おいおいと呆れた感じで、
「他に手はって、そんなの」
 言いかけたその時、
「ないですか?」
アルベルトと目が合い、しばらくして腕を離し、
「ちっ、久々においしい思いが出来るかと思ったのによ」
 すねると笑って、
「お詫びと言ってはなんですが」
 コートの胸ポケットから板チョコを差し出す。

「コートにチョコなんて、よっぽど好きなのか?」
「いえあまり。ただ、聞いたお店で何も買わないで聞くのは失礼かと思いまして」
「別に買わなくてもいいだろ。道聞く程度で」
 そう言いながら、かすめ取るように受け取り、後ろのポケットに無造作に突っ込んだ。

その頃――――




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