「ねぇディス。お買い物に行きたい」
 言ったので、向かいに立っていたディスは、
「何をですか?」
「ステファニーちゃんがね、珍しいお菓子があるって聞いたんだ。限定なんだって、ねぇディス行きたい」
「だめですよ。そろそろお勉強の時間です。それが終わってからでも」
 あっさり一蹴。

 リィは父親譲りの買い物好きで、買う量が半端でなかった。だがそこは侯爵家の子息、厳選した物を買う。
 それにディスは毎回せがんでくるリィのお願いを一蹴する。

「やだっ。その間に無くなったらやだっ!」
「わがままを言わないでください」
「頭がそれいっぱいで勉強なんて出来ないよぉ」
 泣きそうな顔をするが、ガンとして、
「それでもだめです」
 却下。

「ディスのケチ」
「ケチで結構です。なんなら私が買ってきましょうか」
 それにう〜とうなってもディスの態度は変わらない。

 それから数分だろうか、
「・・・・じゃあ買ってきて」
 リィはむくれながらも渋々了承する。

「わかりました。そのかわりちゃんとお勉強に集中してくださいよ。そうでなかったら渡しませんから」
「えーっ」
「じゃありません。後で先生に聞きますからね」

「・・・・は〜い」

 リィを教師の元へ行かせた後、地下室にある執事室へと入り、コートを脱いで専用のコートに腕を通している時に
アルベルトが入って来、
「買い物ですか」
「あぁ。お前は」
 振り返って聞くと、軽く手を上げて、
「あいにく私は」
 断る。

「そっか」
 車のカギを取り、
「じゃあ行って来る」
 鍵を指でヒュンヒュン回しながら通り抜けると、アルベルトは何かに気が付いて振り向き、
「気をつけて下さいね。今朝の新聞も見たとは思いますが」
 言いかけると振り返って、
「あぁ、誘拐事件な。ここ数日ちまたを賑わせてるアレだろ?
大丈夫だって俺はまずなさそうだし。だって狙うのはよさげなのばっかりだろ。写真見ても大体そうじゃねぇか。
俺はこの部類じゃねぇよ。むしろお前の方が危ないんじゃねぇか?」
 笑って振ると、
「私ですか?」
 不思議そうな表情をした。

「お前ほんとあれだな。まぁいいや、行って来る」




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