(ん?ここは?)
薄暗い部屋、身体は拘束されていないのに動かない。その代わりに鉛のように重くて天井を見ていないと、少し
でも動けばむせそうな気持の悪さが胸のあたりを蹂躙している。
だがディスはその悪さのせいだけで上を向いているようではなかった。
(前にもあったな、こんなこと)
眺める目は冷静。
(数えきれないぐらいにな)
しばらくしてガチャとドアが開き、その隙間から光が差し込む。
「久しぶりだな、ディス」
忘れもしない、あの時の事は。
かつてこの屋敷で専属の執事として働いていた時に受けたあの時の事は。
動けない薬を飲まされ、こうやってベッドに置かれる事は何度もあった。
それが限界に達して逃げ出した。そしてもう二度と執事なんてやらないと決意した。
貴方に会うまでは――――
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