頭が痛い



抑えつけるにも身体も何かに打ちつけられて痛い。

指の一つも動かせない。眼を開ける事さえも。

そこに足音がする。近づいてくる。カツンカツンと音を立て、自分の元へとやってくる。

そして引き上げられ、全ての痛みから解放され、眼をゆっくりと開く。

白い、果てなく白い世界。

引き上げた人の顔は口元に笑みをたたえているだけでそれ以上は白い霧に覆われて見えない。
けどどこかで見たような気がする。誰だろう――――思い出せない。


そして問いかけられる。

眼を覚まして記憶がひとつしか残せないとしたら、君はどうする?


その問いかけに詰まることなく答える。


なら、失う記憶に対して君はどう思う?

その問いかけにも詰まることなく答える。


問いかけたその人はその答えにとても嬉しそうに笑みをたたえる。

 自分に会った事があるのか?そう今度は問い返す。

その問いかけに彼は、

「それはもう君には必要のないものだ。そうだろう?違うかい?」

答えることなく、

「さぁもう行くといい」

フッと手を目の前にかざし、

「じゃあね」

その瞬間フワッと風が起こり、身体は深い闇へと落ちていった。



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