「はぁ、終わったぁ」
机の上で突っ伏した清水がいた。時間は午前9時。始業時間である。
実は書類の整理を頼まれており、ちょうどそれが終わったのだ。かかった時間は約8日。
そこに――――
「お疲れ様でーす」
沢村が缶コーヒー片手にやって来た。頬には大きな張り薬が。
「あぁ」
「はいどーぞ」
そのコーヒーを渡す。
「そういえば沢村君」
「はい」
「僕が書類を頼まれた日に大トリものがあったとか聞いたけど」
それにわざとらしく、
「そうみたいですね」
応え、
「それより、僕に用事があって来たんだよね?」
「あぁ、そうでした。これ」
一枚の紙切れを渡す。
「それじゃ失礼します」
「いったい・・・・――――!」
その紙切れを見てびっくりし、その部屋から出、出たばっかりの沢村に、
「わお!」
肩に軽く当たり、足早に課内へと赴き、
「課長!これは一体どういう事ですかっ。解雇だなん・・・・て」
乗りこんできた。その課長席には――――
「氷川課長・・・・」
氷川課長ではあるが、一ではなく慎二の方。
「い、いつお戻りになられたんです?」
「7日前だ」
「今まで一体」
「それより何の用だ?」
「これはどういう事ですか。解雇だなんて」
「誤認逮捕32回」
「え」
「本来、1回でもすれば左遷者だ。お前、どうして今までその場にいられたか、その意味を考えた事はあるのか?」
沢村がかつて、
『まったく、あれだけの事をしておいて、自分が一体どういう意味でそこに置かれているか一度でも考えた事は』
言った言葉はこの事だ。
「それは・・・・・」
「優秀だからとか言うなら随分とおめでたい頭だ」
呆れた視線をわずかに向ける。
「お前が置かれていたのは単に使いやすかっただけだ。何もわかってない奴は使い勝手がいい。
だからこそお前の誤認逮捕を大目に見てくれていた。ただそれだけだ」
「・・・・2課長もそれに同意したって事ですか?」
「そうだ」
「そん――――」
「2課も俺の管轄だからだ」
「え?ちょ・・・・ちょっと待って下さい。二課長は」
その時、牧はふいに前にある壁に内蔵されたテレビに眼をやる。清水もその視線を追う。
テレビでは同じテロップが流れている。そこに書かれてあるのは、セブンデイズシステム最初の確定者。
名前はふされ、31歳の男性公務員と書かれている。
3年前に人を一方的に殺し、執念での逮捕と書かれている。
指揮を取ったのは、警視庁捜査一課・課長:氷川慎二警視正。
処刑は今日の午後7時に遂行される。つまり、書類を頼まれた日に捕まっていたということになる。
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