「どうしたの唐竹さん?」
「あ、いや」
 その時、ガシャンっとガラスが割れる音がし、条件反射でそちらの方を向くと、
「あっ!」
 櫻井が声をあげる。

「なんだあいつ」

「あの時のっ!」

「知り合いか?」

「いや、知り合いって言うか・・・・」

 あの時デパートでバレンタインのチョコが欲しいと言って猛ダッシュしていった奴。色々な事がありすぎて記憶から飛んで
いた。どうしてチョコをくれなかったのかとわめいている。

「って言っても」
 初対面で親交もないのに渡す人間はいない。

「まずいな、あれは手の付けようがないぞ」

「どうしよう」
 慌てると、唐竹は冷静に、
「とりあえず廊下に出よう」
 腕を掴んで廊下に連れだす。

「遼子さんっ」

「うわ、追いかけてきたよ」
 それを皮切りに走るっ!

 だが櫻井はなれない格好をしているので走りは良くない。それに、
「辛抱しろよっ」
「おわっ」
 唐竹は腰に手を回して担ぎあげ、人気の少ない所まで駆け抜け、櫻井を下し、

「離れてろ」
 間を開けて切り離した相手を待ち構える。

「このまま逃げた方が。どうせさっき撃って捕まるのは確実なんだし」
 そう提案する櫻井に、わずかばかりに首を振り、
「捕まっても一時の事だ」
 そう言ってコンラッドを出し、
「こういうのはな、初めが肝心なんだ」
 半身に構え、左右にあるセーフティをガチンと解除し、

「わからせる事はとても大切なことだ」

 後方の足をひねり、そこに重心を置くと同時にガシンっとスライドを下げると同時に人影が現れる。

「おいでなすったな」
 ガチャっと構え、照準を見る。その目はいつもの穏やかなものではなく、据わっており、ふーっと息を吐く。

「そんなハンドガンでかなうと思っているのかっ!」
 そう言った瞬間、チッと頬を銃弾がかすめる。その瞬間、目を更に据わらせ、
「さぁ、どうかな?」
 一瞬不敵な表情をして引き金を引く。

バスっ!

 普通の銃弾かと思いきや、飛んできた弾は散弾!

「ひっ!」

 その後から形の違う弾が次から次へと飛んでくる!

 ダンダンダンダン!

「わ、わーっ!」

 慌てて逃げ出し、追いかけてきた警察に捕まる。

 その後の惨状を見て苦笑しながら空のマガジンを排して新しいのをガンっと入れ、セーフティを閉めた。

 のちにミリィに話した所、唐竹の銃の詳細聞いた。

 唐竹の銃「コンラッド」はハンドガン系カスタムガンである。二つの銃口があり、上は多彩な通常弾が出て、下は散弾が出る。
 セーフティも二つあり、左右に分かれている。通常弾と散弾とわけている。散弾の装弾は4発。
 マガジンは一つだがその間に筋が入っていて分かれており、排莢は同じ所でするようにしてある。

 普段は通常しか使わないので通常用のセーフティしかはずさないが、こういった場合はもう一つの散弾用のセーフティも外
して対応する。技名は「シューティングスター」

「・・・・ちょっと派手にやりすぎたか」

 その後、捕まった男はたびたびデパートに来る櫻井に一目ぼれしたのだという。



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