朝――――
「ん・・・・」
気がついた時には、小鳥がさえずっている時間だった。
もうろうとする意識の中、眼をこすりながら起きて辺りを見ると牧の部屋のソファに寝ていた事が判明。
そして徐々に意識が戻ってきた瞬間、櫻井は何かに気が付き、
「あーっ!」
ガバっと勢いよく起き上がる。それに、
「きゃっ」
ミリィが驚く。
「もう坊や驚かさないでよ。びっくりしたじゃない」
「ご、ごめん」
「それよりどうしたの?」
「仕事だ仕事っ!」
「ご飯は?」
「いいっ!」
自宅を開けて仕事道具を持ってすぐに出てマウンテンバイクで急いで出た。
場所は市街のとあるスタジオ、ギッとマウンテンバイクをいつもの位置に止め、中へと入り軽く挨拶しながら足早に通り過
ぎ、いつもの部屋に入る。
(ギリギリセーフ)
心の中で安堵の息をつくと、その部屋にいた女性?が、
「珍しいわね櫻井ちゃんがギリギリに来るなんて」
声をかけてきた。
「掛川さん」
この人は掛川さん。スタイリストさんで性別は男性・・・・だけども女性が入っている。今で言う“オネェ”。
「ひょっとして女の子とでも」
冗談じみた事を言ってきたので、ハハハと苦笑し、
(女の子ならいいけどね)
「まっさかぁ」
返す。
「つまんないの〜」
昼――――
「あー腹へった。何も食べないできたからなぁ」
スタジオから出てファーストフード店に入る前にカバンに手を突っ込んでゴソゴソ、
「ん?」
ゴソゴソ
「・・・・へ?」
そこに自分には不似合いなものが紛れていた。それに櫻井は、
「やろぉ・・・・!」
腕に付けている携帯を開いて電話帳を開く。
(よっちゃんさんならあいつの番号知ってるは・・・・)
するとそこにまた不思議な事が・・・・
もう眼のあたりがピクピクしてくる。そして、
「おいっ!どうしてミリィが入ってんだよっ!」
電話口で牧に怒鳴りつける。夕食の時に返したはずなのに、
『前回の事がないとは限らないしな。入れておいた』
どうして入ってんだ!
そしてどうして電話番号が登録されてんだっ!
まるでかけてくる事を察したかのようなこの行動。この手際の良さ。いやぁ、手間が省けて、
(よくないっ!)
よくない。
「もうないっ!返すっ」
『それに特殊なガンロックをしてある。間違って弾がでる事はない』
「人の話きけよっ!そういう事じゃなくて――――!」
何かに気がついた。
「・・・・それよりあんた、したのかよ」
おずおずと聞いてみる。
『なにをだ?』
・・・・
「察しろよっ」
・・・・
それに呆れに近い溜息が出、
『してるわけないだろ。あのあと気を失ったんだぞ。覚えてないのか』
答えると電話口の櫻井はフルフル震え、
「・・・・返せ」
携帯電話を前にやる。あぁ・・・・はらわたが煮えくりかえりそう・・・・!
それはどうしてか?答えは簡単。
「俺のファーストキス返せっ!」
まだだったから。
Copyright.(c)2008-2010. yuki sakaki All rights
reserved.