ブツ・・・・
(変わり身はやっ)
(そう言ったはいいけど・・・・)
困惑すると、沢村が察知し、
「俺が連れてってやるよ」
牧の方を見る。何も言わないからしてOKだとわかったので、先導すると、
「いいんですか?すいませんっ」
沢村の後に付いていく。通り過ぎる二人に唐竹は、
「沢村っ、バイクにしとけよ。あそこは今日、工事で・・・・って聞いてないし」
呆れた溜息をつき、
「さて、こっちは」
キス現場を思いっきり見て愕然としている一を流し見、その背後から膝まずいて肩を掴み、
「ほら、立って下さいよ。いくら確定しているとはいえ、手続きがありますから」
上げようとするが上がらない。それどころかその手をはねのけられる。
プチッ
「やれやれ」
そう言いながら向かい側に立ち、
「人が最後まで敬意を払ってやろうと思ったのに」
グッと胸ぐらをつかみ、
「どうやらその必要はなさそうだな」
軽く掴み上げる。
「お、おろせ」
「じゃあ素直に従うか?」
普段より低い声。それは犯人を尋問する声だ。眼も据わっている。
「じ・・・・人権を無視するつもりか」
それにフンっと笑い、
「人権だと?その人権さえ無視するどころか、排除しようとした奴に、人権をどうこう言う権利があると思っているのか?つくづくめでたい頭だな」
そこにカツカツとミリィが歩み寄り、
「あら、あきれた。締め付けられた程度でギブするなんて、あんたがあの子にした仕打ちに比べたら安いものじゃない」
腕を組んでにらみあげる。
「さっさと地獄に堕ちるがいいわ」
「連れていけ」
「了解」
そう言って唐竹は軽く担ぎあげてあいてる手で背を向けて手を振り、部下と共にその場を後にした。
わずか、半歩、一歩、そして彼方へ――――
「やだっ!離せっ!兄さんっ!」
それにミリィは歩み寄りながら、
「まるで断末魔ね。見苦しい。あの男、死ぬのに時間かかりそうね」
髪をはじき、
「あたしとしては歓迎ね。死に場所を用意されてるだけでも贅沢なのに、そうあっさりと逝って欲しくないわ。
苦しむだけ苦しんで逝ってもらわないとね」
妖しく笑った。
時計の針は十時を示した。いつものように世界は動く。ただひとつを除いては――――
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