ガチャ
「え」
冷たい鉄の輪が自分の手にかかった。そこには唐竹と沢村。そして数名の部下がいた。
茫然とする一。
それに牧は、
「俺たちはあの時何をしていた?」
問いかけながらギュっとフランクをホルスターに戻す。
「・・・・え」
「確か強盗犯を一緒に追いかけていたんですよね。その強盗犯が見ていたんですよ。貴方があいつを殺した瞬間を」
唐竹が代わりに答える。
「――――!」
「貴方はその逃亡した強盗犯を犯人に仕立てた。しかしその強盗犯は見てつかの間、捕まえました」
「そんな命令もなしに」
それに沢村が、
「命令なら受けてますよ。何もなしにいなくなるようなうちの課長じゃありませんから」
返す。
「その報告と書類は渡しています。ですが課長がいなくなったことで貴方は頭がいっぱいでそれどころではなかった。いつもなら
きちんと目を通しているのに、その時だけは目を通さなかった。いつもなら聴取をするのに、それを俺たちに任せた。
そのおかげでここ3年、証人を隠す事が出来ましたよ。
もし貴方が聴取をしていたら、証拠をもみ消される可能性はありでしたが、貴方は課長の事になると公私混同しやすい。
それはまずないと言っておかしくないと思いました。
そして証言。証人の確証を得るためには貴方がやったという証言が欲しかったんです。ついでに言うと、貴方が裏で
何をしているかも知りたかったですしね。何かをしそうだとは思ってましたよ。危うくこの国のお偉いさんにならなくて
済みましたよ。そうしたら何もかもが消されてしまう」
『あいつと同じように殺されたいのかっ!』
「ちょ、ちょっと待て、どうしてそんな、それにどうして僕が言った事を知って」
「あぁ、言い忘れていましたね。櫻井さんがバレンタインに渡したその万年筆。俺の盗聴器が組み込まれてるんですよ。
そういったものを俺たちが渡したら不審に思われるでしょ。でも櫻井さんからのなら不審がられない。だって、大した力がない人間を
ここぞとばかりに貴方は見下している。その人間が渡すものにまさかそんなものが組み込まれてるなんて思いもしませんしね」
『当たり前だ。それぐらいしかできないんだから』
「人間をなめた代償・・・・高くついたな」
「で、でもジョーカーの弾は」
「あれでいいのよ。貴方を地獄へと送ったわ。ちゃんとね」
「?」
「自ら作った断頭台で死ねと言う事よ」
「な――――!」
「よかったじゃない。自分の作った処刑台を味わえるなんてめったに経験出来ることじゃないわよ」
ミリィは吹きだすと同時にクスクス笑う。
「でもいいの兄さん。この国の人たちはみな」
その言葉を遮るように、
「その件ですが――――」
唐竹が携帯を開いた。
その頃・国会内――――
「申し訳ないが、これより先、ここを通すわけにはまいりません」
警察の制服を着た年配の男が入り口を背にして立っていた。
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