3日後・昼――――
課内――――
「さー、ご飯だご飯」
伸びをする沢村に、
「買いに行くんだったら俺のも頼む。今から課長に用事があるんだ」
「例の件っすか。あんなシルエットでよくわかりましたね」
「まぁな。それより頼む」
何かを渡す。
「何でもいいですか?」
「あぁ」
背を向けてひらひらと手を振ってその場を後にする。その沢村の背後に、
「沢村君。君は何度言ったらわかるんだ。上の人間に対して座ったまま」
口うるさい清水が、だが沢村は目を合わさず、
「それはどーもすいませんでした」
席を立って外に出る。
そのころ歩く一の後ろで唐竹は報告していた。あの後すぐ報告してもよかったの
だが、不審に思われると思ったのか少し間隔をあけて報告した。
差し出した書類を受け取り、
「唐竹」
「は」
「コンタクトを取っておいてほしい。都合は彼女に合わせる」
「わかりました」
言ったその時、
「当たり前だ。それぐらいしかできないんだから」
そう言って、さっさと歩いていく。その背をたたずんで見る唐竹は顔にこそ
出ていないが、深呼吸し背を向けて歩きだした。
そしてその晩――――
「課長〜」
沢村。慎二の顔を見るなり飛んできたので手慣れた様子でサッとさけ、壁に激突。
実はミリィと櫻井が話している頃、牧の家では――――
『とまぁ、それが現状』
『そうか』
3年の埋め合わせの状況を話していた。
『にしてもだ』
『ん』
『休職扱いとはどういうことだ。一年ならまだしも、それが継続しているのは』
『おやっさんがそうしておけって』
『・・・・・!』
ピリピリしそうになったのを、
『ま、まぁ仕方ないって』
なだめる。
『それよりだ。話しを聞きだすにも必要な奴がいるからな』
それにピンとくる。
『・・・・あいつか』
『課内いちのハイテクはいるだろ』
「いったぁ・・・・・」
沢村啓太(27)警視庁捜査一課第二強行犯人捜査・殺人犯捜査第一係・巡査部長。銃レベルS3(ハイクラス)
課内いちのハイテク。
「ねぇ、あの人も」
指さす櫻井に、隣のミリィ、
「違うわよ」
きっぱり否定。
その後、唐竹はミリィにあることを報告する。
「嬢ちゃん、今朝のあいつどうだった?」
「あ、悪寒ね。なかったわ」
「やはりそうか」
「?」
「あ、それ慎二の警察の証明写真」
「これ、よぉーく見てくれ」
そう言って部屋の明かりを利用して写真を斜めにすると、指紋以外に何やら痕跡が・・・・・
それに引くミリィ。そして――――
「ミリィちゃん、ごは」
田淵が来た次の瞬間!
「いやーっ!」
バコッ!
「気持ち悪いっ!気持ち悪いっ!気持ち悪いっ!」
重厚なフライパンで叩く!叩く!叩く!
パンパンパンパンパンッ!
「じょ、嬢」
さすがの唐竹も止める。このままだと死にかねない。それでも、
「いやーっ!」
ゴスンっ!
「・・・・・」(唐竹絶句)
翌日――――
その日の週末、 櫻井は女装し、誰もいない事を確認したのち、外に出る。
場所はデートしたあのデパート。待ち合わせも前と同じ。
「こ、こんにちは」
「こんにちは」
(名前は櫻井遼子、22歳。会社のOLか)
その前に一は唐竹の情報以外で住民情報を取っていた。当然、そんな人物などいるわけがないのだが、住民情報には載っていた。
それはあの時、唐竹が外に買い物に出る沢村にあるものを渡した中に明記されていたのだ。
つまり唐竹が沢村に頼んだのは情報操作だったのだ。
「あの時はごめんなさい。考え事をしていたものだから」
「考え事?」
「き、気に入った服が二つあって、どれにしようかなぁって」
なんとかごまかす。
「そうですか。女性らしい悩みですね」
(これが牧の弟さんか。ミリィが言っていたのとは違って常識人っぽいような)
「では行きましょうか」
「は、はい」
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