ゴスっ!

「聞かなくていいわよおじさま」
「為にならないから」

 ミリィと櫻井が背後から田淵を潰し、外へと放り出して鍵とチェーンをしっかりつけた。

 その3日後――――

「行ってきまーす」

「いってらっしゃい」
 ミリィは笑顔で手を振り、ドアを閉めフーッと息をつき、
「おっはよー!」
 懲りずに来た田淵にいつものようにフライで焼いてフライパンではり倒す。

「ミリィちゃん、そんな事をしたらまたフライパンが」
 それにニコっと笑い、
「ご心配なく。その時の為に」
 テーブルに視線を送る。そこには――――

「予備ならいくらでもあるから♪」

 気に入ったフライパンとは違う別のフライパンが数個。見るからに重厚。

 つまり紙袋には気に入ったフライパン。そしてビニール袋に入っていたのは、
セール品のぶちのめす無理に使っても問題なしの使い捨てフライパン。

「えー・・・・」

 それから櫻井は約束の場所へと到着し、
「おじゃましまーす」
 部屋へと通される。そこには――――

「こんにちは、櫻井君」

 一人の男がいた。

 某スタジオで遠くではあるが、見た事があるモデルがそこにいた。

「あ・・・・ども」

 櫻井は軽く挨拶する。このモデルには嫌なうわさがついていた。
イケメン好きの掛川がこのモデルだけは嫌がっていた。それは――――

『あのモデル、人の物を横取りするって評判なのよ』
モデルとしての評判はいいが、人としての評判は芳しくなかったからだ。

「昨日電話してたら君が来るって聞いてさ。僕も会いたくって来たんだよ」

『最近もあの子の彼女を横取りしたばかりで、気の毒よねぇ、まだ付き合って間がないのに』

 なんて話を聞いていたが、
(彼女のいない俺には関係ないし)
 聞き流した。

「どうしたの?」

「いえ、別に」

「まぁとりあえず座りなよ」

 そう言ってさまざまな話をし、日も暮れかけてきた頃、そろそろ帰ろうとしたその時、そのモデルが櫻井の手を掴んだ。

「ねぇ、櫻井君」

「は、はい」

「君・・・・、相手がいるよね」

「え」

「しかも最近・・・・違う」
 先ほどと様子が違う。それにドキっとわずかながらに動揺を見せたがすぐ、
「な、何言ってるんですか。俺に女は」
 小刻みに首を振ると、櫻井に迫り、
「僕はね、においでわかるんだよ。君は」
 わずかに嗅いで、
「受けだね」
 答えた瞬間!

「――――!」

「あたり。なら」

「えっ!うわっ!」
 押し倒される。

「君をその相手から奪う。僕はね、良さそうだと思ったものは必ず手に入れる。男女構わずね」

「は、離せっ!」

「いつものように上手く撮ってね。相手に送りつけるんだから」

「わかってるよ」

「あんたたちグルで」
 そう言った時、二人は怪しい表情をする。




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