その翌日・ヘブンズシティ市役所・市民課――――
「今なんて言いました?」
「だからそれで行ってくれって」
「何かの冗談」
「じゃないから」
そう言うのは、多田とそのまま組んでおいてほしいと言う事だった。あのあと結局酒場に連れて行かれ、酒がすすんで
彼らのプラス、多田の言うコップ四杯(ジョッキだけど)、を二も超えた。
それなのにピンピンしてるのをきっと多田が言ったのだろう。つまり自分なら倒れる心配がないと。
上司もそろそろ考えてたんだろう、そこに昨日の自分が強いと言う事であっさり決めた。
「いやー、定まってよかったよ」
よくない。(首振る)
昼・近くの公園――――
二人でベンチに座り、昼食を取っていた。
「お前、以外にも強かったんだな」
「付き合いが多い所で暮らしてましたんで」
「なぁ、本当に知り合いじゃないのか?」
そう聞くのはあの青年が佐々倉をずっと見ていたからだ。多田に上着を渡した際、話しかけられたが応えもしなかった。
名は綾島いつき・22歳。アルコール依存症でピアノを弾け、また弾かなくなったピアニスト。
それに間髪いれず、
「知り合いじゃありません」
断言し、
「それに話す事もありません。それと多田さん、生前親交のあった人は自分たちが見えないんですよ。まさか忘れて
たんですか?」
聞く。
「あぁそうだったな」
「・・・・」
生前親交のあった人に自分たちは見えない。そして今も関わる人の親交が深くなると見えなくなる。
「それよりあの寿司うまかったな。これで腹が満たされたら言う事もなかったんだけど」
そう言うのは自分たちが下界の食べ物を食べても吸収されない。満たされるのは自分の世界の食べ物だけ。
だから昼食などは買って行くか、または。
「それよりお前、自炊なわけ」
自炊。
「自分、出来あいもので育ってないんで」
「そっか。で」
背後に目を送る。
「どうするよ、あれ」
それに佐々倉は視線を向けずにお茶を飲み、
「アルコール依存て、頭まで侵すんですかね」
弁当のふたを閉める。
「さぁな、なった事ないからわからん」
それが数日続いた。
朝――――
ヘブンズシティ市役所・廊下――――
「いい加減いやになってきたな。監視されてるみたいで」
さすがの多田も嫌気がさしてきた。
「あの大将に言うか。この時間ならまだ動いてないだろ」
下界――――
「お前はここで待ってろ、いたらあれだしな」
「はい」
そう言って多田は商店街内へと姿を消す。そして佐々倉はその商店街の中心である円型の広場のベンチに腰を下ろす。
しばらくして前に影が差し、上を見た。
その間、準備中とかけられたすし屋に入り、
「あいつ・・・・どうもすいません。きつく言い聞かせておきますんで」
平謝りする大将。
「お願いします」
「所でお兄さん、聞きたい事があるんですが」
「はい」
「横にいた方、確かみのるって言いましたよね」
「はい、佐々倉みのるです。それがなにか」
「いや、あの後あいつ「みのる、みのる」ってうるさくて。それで思い出しましてね。私は実際に会った事は
ありません、預かって欲しいと連れてきた親父さんが話してくれた中にいたんですよ」
話しだす。
「何度も言う通り、自分は佐々倉です」
「あの人の一文字違いで佐々木みのるって言うんです。市の職員さんでね」
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