朝――――

「・・・・ん」

「あ、今日は休みか」

 そう言ってラフな格好に着替え、抜いた新聞を読まずにテーブルに置き、そのまま家を出、自転車を出す。

「買い物かね」

「えぇ、買ってきて欲しいものとかありますか?」

「いいのかい?じゃあ白菜かってきてくれないかな。昨日買い忘れてカミさんに怒られたんだよ」

「わかりました。じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい」


 その言葉を背に自転車にサッと乗り、ペダルを踏む。

 ゆるやかな坂をブレーキをかけずに降りて行き、左右を見渡し、河川敷の一本道を心地よい風にさらされて通り抜け、
川が流れる橋を抜け、歩道橋を抜けた所に市街が見える。

 この街の平均年齢は五十五ほど。それは手続きの際、自分が良かったと思う年齢を書いてもらう。
 そうすると着いた時にその姿になっている。年齢は当然動かない。

 市職員に選ばれなかった人はこの市街の職に就く。
 公共施設もあり、街としての機能は下界と大して変わらない。時間は止まっているのを除いては。

 そしてまずブランチを摂り、それから行きつけのスーパーへと入って買い物をし、再び自転車に乗り、先ほどの
河川敷の一本道で降り、空を見上げる。

「もう、5年か――――」




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