規則正しい音がする。
「――――っ!」
「――――っ!」
ん?それに何かやけに騒がしいな。
けど目が重い。後にしてくれないか。
眠たいんだよ、とても――――
ピー・・・・・
そして次に目が覚めた後、薄青い病室にいた。
息苦しい。白い布?何かぶせてくれてんだよ、縁起でもない。
「そうだ俺、トラックにはねられて」
病院のベッドに寝かされ、ゆっくりと起き上がって隣を見ると、
「――――!」
背筋が凍ると同時に絶句した。そこにはズラッと自分と同じように人が寝かされていた。顔に白い布をかぶせられて。
起きた際にはがしたものはそれだった。
「なんなんだ一体・・・・」
それを茫然と眺めていると、スーツを着た女性が入って来、
「佐々木みのるさんですね」
「はい」
「本日付で貴方はこの市役所の市民課に配属されることになりました」
そう事務口調で言って書類を渡される。
「あ、あの、自分は一体」
「貴方は死んだのですよ、あの事故で」
「死んだ・・・・・」
それに女性職員は、
「胸に手を当ててみてください」
それに恐る恐る手を当てる。
「止まっている・・・・・」
それはもう否定しようもない事実だった。心臓が止まっているのに他の機能は動いていると言うおかしな現象。
「それではこれをお読みになった後、隣にある更衣室でこれに着替えて事の詳細をお話しいたします。場所は
この上の階で受付に聞いてください。それでは」
そう言って部屋を出た。
渡された書類。それは自分が死んだあとの状況。きちんと自分の死と言うものを受け入れさせるために存在する。
その文面の中に流せない言葉があった。
ただでさえ死んでいると言われて絶望を感じているのに、それに拍車をかけ、更にどん底へと突き落とされる
かのような言葉。
「冗談じゃねぇよ!だいたい、助けてくれなくても自分で逃げたよ。それをわざわざ、おせっかいもいい所なんだよっ!」
無駄死にもいい所だった。何もしてないうちに無駄死になんて。
俺の人生は一体なんだったんだ?
茫然とした頭で更衣室へと入り、消毒臭い衣服を脱ごうとした時、肩に何か痕がある。ロッカーの鏡ではわからない、
どこかに姿見はないかと見渡し、その奥に見つけ、それを見た瞬間、佐々倉は眼を見開いた。
あの時に噛まれた痕、くっきりと嫌なぐらいついていた。
息が震える。
冗談じゃない。
忌まわしい痕跡。
冗談じゃない。
あいつがあんな事さえしなければ。
冗談じゃない。
これからずっとこの忌まわしいものをつけて・・・・・つけて
「うっ・・・・・うわぁーーーっ!」
地響きのような叫びが出た。
そして頭にフツフツと湧き上がって来る黒い憎悪。
許さない許さない許さない許さない――――!
あの後あらかた暴れ散らし、落ち着いた時には消火剤をまかれすぎた火が地にへばりつくように鎮火した、
いわば放心状態。
あの後その仕事について説明された。聞こえたのは死んだら名前の一文字が変わるぐらいで、その先の
詳細は入ってこなかった。それを知ってか「就く時に再度お話しいたします」などと言われた。だったらそうして
くれればよかったのに、だがこれも仕事だと言われた。あぁそうか。
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