眼を覚まして記憶がひとつしか残せないとしたら、君はどうする?
自分の事を取りますよ。「執事」である自分を。
私にとって「執事」は私自身にほかなりませんから。
なら、失う記憶に対して君はどう思う?
私には必要ではなかったという事でしょう。
もし大事であるなら、無理に思い出す事もなく、また自然と思いだすものではないでしょうか。
それが来ないという事は、生きていく私にはそれほど必要なものではなかったという事なのでしょう。
それに思い出は、生きていれば入れ直しがききます。
フッと手を目の前に垂直にかざし、
「さぁもう行くといい」
その瞬間フワッと風が起こり、
「じゃあね」
霧が晴れる――――
「フォード君」
「――――!」
ルゥ、きっとお前が喜ぶものだよ。そして――――
お前のかけがえのないものとなる。
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