そんな事も露知らず、揃ってダイニングからリビングへと場所を変え、リィ、ステファニーと共にカードゲームを
楽しんでいた。
「にぃ様の番だよ」
僕はあのとき驚いた。そのワインが偽物であるという事を。ひょっとしたらボトルは本物で中身が入れ替えられている
だけかもしれない。
「あぁ、ごめん」
そう、ステファニーが誘わない理由はこういう事。僕たちにそのような偽物を口にしては欲しくなかったからだ。
料理とて僕が来ると聞いているから上質なのだろう。
それにこれだけの人間がいれば管理も混乱するのだろう。内緒で飲んで取り替えてもわからない。
主にとっての取っておきは、使用人たちのとっておきでもある。
それは大半の使用人たちがキャンブリー家に対するものが薄いせいだ。
あの執事と舞踏会の際のこうなる以前から付き従ってきた使用人は別として。
それを飲まないといけないのかと思ったらゾッとした。出来ればにおいも嗅ぎたくない。
しかしせっかく用意した席で言うのも悪いと思った。だがこれは――――
そう思った時にアルベルトが止めてくれたから助かったものの、それを気づかずに飲んでいる彼らを恐ろしいと思った。
そして当主にステファニーを別荘に連れて行きたいと話すと、先ほどの気まずさの挽回なのか快諾し、
なんならこのまま連れて行ってもかまわないと言ったので、そのままステファニーを連れて
キャンブリー家の屋敷を後にした。
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