その下では――――

「♪〜」
 櫻井が携帯をいじっていた。牧のバイクのそばで。

「おい」
 夢中になって聞こえてない。

「おい」
 まだ聞こえてない。

 ヒュッ・・・・カンっ!

「ってぇ〜、何すんだよっ!」
 缶コーヒーを投げられる。

「返事ぐらいしろ」

「・・・・すいません」

 世界は変わらず動き続ける。変わりそうになった事など誰も知らずに。

 俺の世界で変わった事があるとするなら――――

「そこにいるって事はあれか」

「うん」

「乗れ」

「はーい」

 貴方と出会った事。

 塔のデジタル時計が7時を示す。それに櫻井は一瞥しただけで通り過ぎた。



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